STMG 古伝武術の世界|「氣」とは何か、「勁」とは何か
columns

古伝武術の世界

武術上での「氣」

最初に申し上げますと、武術での氣というものは形而上の概念ではありません。概念上のものではなく具体的な身体感覚を伴った物理的なものです。勿論、心理的な意味でも用いますし、精神的なものとして扱ったりもします。しかし、精神的な物として扱った場合でも具体的「感覚」が生じるのは確かなのです。もう少し実際の事象として語ることができれば良いのですが、公開することが禁じられている面が多いものですからこのような書き方になってしまいます。

大雑把にいいますと、特定の稽古を積みますと背中を何かが這い上がったり、それとは反対に胸から下腹部に向かって降下し、重さを伴ったジャイロのようなものを形成したりもします。あるいはそれそのものを相手に飛ばし、一定の心理的効果を発揮したりもするのです。こればかりは経験しないと分からないことばかりなのですが、決して想像上のものではない事は確かです。

「氣血」とは

この氣は武術上では単体で用いられることは少なく、多くの場合は「氣血」という表現で説明されています。この血という言葉なのですが、これは実際の「血液」のことでもあるのですが、そればかりではなく「血液を生じさせる後天の氣」を意味しています。後天の氣とは人が生まれてから肉体を構成するのに備わっている様々な働きの事を指しています。

細胞分裂を促すような力、幼児から大人に体を作り変えるように促す力、髪や爪を伸ばし続けるような力等々、肉体に備わっている「見えない力」をそのように捉えたのです。(現代ではDNAや遺伝子、ゲノムといったものが解明されて不思議ではなくなりましたが、古代ではこのように不可思議な力として表現されたのです。当たらずとも遠からずといった感があります。)

4/12 ページ